テクノスケープ人工的空間風景

2023年7月14日

引越しをするので預けておいた荷物を持ってきてもらうと、テクノスケープというDVDが数枚箱の中にあるのを見つけた。このDVDは15年ぐらい前に自主制作で初めて制作したDVDでした。作るきっかけは映像を作る環境がデジタル化で激変したこと。それは小型で高性能のデジタルカメラが発売されたことと、パソコンで映像編集が自由にできるようになり、安価に高画質の映像を制作することができるようになったことでした。それまでの映像制作はとてつもなくお金のかかる作業で、例えば仕事で作る映像を制作するには撮影の技術会社に依頼しますが一日15万ぐらいの撮影費用が掛かります。また撮影した映像を編集するとなると1時間2万ぐらいかかるビデオ編集室を10時間はおさえて編集することになります。
しかし映像のデジタル化により誰でもお金を掛けずにプロレベルの画質の映像を作ることができるようになりました。今ではスマホで撮影した映像でも全く問題ありません。

高性能のカメラが小型でより安価になると、それまでカメラマンに依頼して映像を撮影していましたが、自分でもカメラを回して撮影するようになりました。自分でカメラを回せばお金が掛かりませんし、自分で撮りたいものを撮りたい時にとれます。それで何を撮ろうとかと考えた時、自然の風景なんか撮っても面白くないので以前、岩井俊二の映画で「スワローテール」という映画があり、本編はあまり面白くなかったのですがオープニングでコンビナートの空撮映像あり、これが凄く退廃的でカッコよく見応えありました。それで巨大な人工建造物を撮影して見ようと考え半年掛けていろいろな人工建造物を撮影しタイトルを「テクノスケープ」としました。最初に撮影したのは川崎にある巨大なコンビナート群で、その迫力と近未来的な風景に圧倒されます。次にダムを撮影しましたがダムといえば黒部ダムを撮影しない訳にはいきません。他に八ヶ岳にある電波望遠、鉄塔、高層ビル群、風力発電、高速道路の立体交差など思いつく巨大建造物はすべて撮影しました。
撮影して思ったのは、この巨大な建築物は千年後、一万年後にどれだけ残っているのかということ。アメーバのように広がるコンビナート地帯は水中に没収、高層ビル群は崩壊し、橋や高速道路は植物たちにのみこまれる。そこに人は存在しているだろうか。もしかしてすでに火星などに移住しているかもしれません。
いろいろな建築物を収録しましたが別に趣味でやっている訳ではないので、これらの映像を商品化しなくてはなりません。一番良いのはDVDメーカーに企画を持ち込んで作るのが一番リスクを背負わなくて良いのですが一度DVDのプレスからパッケージのデザインまで、自分でやってみたかったので全てのリスクを背負い作りました。ただ商品はできますが流通に乗せることができないので、そこだけはDVDメーカーにお願いするしかありません。
何社かのDVDメーカーに話をし、最も条件の良いメーカーと販売の契約を交わすことが出来ました。最初のプレスは3000枚し販売にこぎつきました。
一年かけて2000枚ぐらいはけたとき何と契約したDVDメーカーが倒産してしまいました。少し売掛金が残っていましたが諦めるしかありません。
それで残った1000枚を自社で売らなくてはならなくなり、ダンボール箱に残った1000枚のDVDが邪魔でしからありませんでした。その後アマゾンでDVDを販売できることを知り出品してみると、これが意外と売れ中には数枚まとめて買う人がいて、後で気づいたのですが転売目的で購入するようでした。
それで一年でほぼ1000枚近くを売ることができました。あとは知り合いにあげたりしていると気がつくと封を切ったDVDが数枚あるだけでした。
今、アマゾンで確認すると10年以上経っているのに定価2980円のDVDが転売最高値で6000円ぐらいでまだ販売されていました。これならまたプレスして再版しようかと思いましたが、もうそんな体力もないのでやめておきます。