朗読劇SENMOU 1あらすじ

2023年7月19日

画像作成AIと朗読声フォントを使いシナリオSENMOUを朗読シナリオとして作成します。
第一回目はあらすじを画像作成Stable Diffusionを使い作ったイメージ画像と合成音声で作成しました。

【あらすじ】
主人公、河野啓太が、ある日の夜、ジョギングの帰りに目だけが光る不気味な黒い影を目撃する。その黒い影を目撃してからいつか嫌なことが起こるのではないと、日々過ごしていた1年後、それは突然やってきた。河野はフリーのグラフィックデザイナーで毎日、自宅でパソコンを使いデザインの仕事している。ある日、恋人の瑞穂(28)からの電話に出て椅子から立ち上がると、今までに感じたことのない目眩に襲われ、その場に倒れこんでしまう。瑞穂は河野の異変に気付き電話口で呼びかけるも返答がない。これをきっかけに河野は、これまでごく普通の日常生活から、現実と幻覚と夢が複雑に交差する異空間とも言える、パラレルワールドに放り込まれる。
それは、ある時は無人の街を彷徨い、ある時は高層ビルの最上階から落とされそうになり、ある時は不思議な宗教施設に閉じ込められる。そのすべてに共通しているのは、河野の手足の自由が利かないこと。何とかこの異空間から抜け出そうともがく河野であったが、ある時、暗闇の中で、亡くなった父親の一作に出会う。父親からは母親の明子のもとへ戻るように言われ、河野が子供の頃に父親一作から貰ったある物を渡される。それからどのくらい時間が経ったのか、河野は気がつくと病院のベッドの中で目覚める。
そこには母親の明子と瑞穂の姿があった。河野は医師に自分が体験したことを話すと、それは「せん妄」という症状で、急激に環境が変化することで、脳の中で起こる幻覚や幻聴の一種で、いわゆる意識障害であることを告げられる。しかし、ただの夢の中の話とはどうしても思いえない河野は、退院後に自分の部屋に戻ると、父との出会いが単なる幻覚ではないことを確信する。
 

60分ドラマ
【登場人物表】

○河野啓太(36)グラフィックデザイナー
>○石川瑞穂(28)啓太の恋人
○河野一作(35)啓太の父親。26年前に死去
○河野明子(58)啓太の母親
○高原美津男(48)取引先部長
○山川一博(26)取引先社員
○上田健一(55)医師
○山本耕史(28)セラピスト
○祈祷師の女(年齢不詳)
(回想)子供時代
○河野啓太(10)小学三年生
○河野一作(35)会社員
○河野明子(32)主婦

○ 無人のオフィス街

人の気配の全くないオフィス街。信号だけが点滅している、一人歩いてくる河野啓太(36)、
食後の皿や料理がそのままに灯りの付いた無人のレストランやカフェ、ウインドーに飾られた動くマネキン、その様子を眺めている河野。
突然上空をカラスの群れが飛び交う。上空を見上げる河野。カラスの群れが河野に目がけて襲いかかる。
恐怖にひきつる河野の顔。

○マンション駐車場へ通じる階段
(夜)
薄暗い階段を駆け下りるジャージ姿の河野。ジョギングをするため車の前で軽くストレッチしながら駐車場の出口に向かう。
駐車場の出口あたりで一瞬黒い影が通り過ぎる。
河野、黒い影を見かけるが差ほど気に掛けず出口に向かう。
河野 「・・・・」

○同
駐車場出口
軽く腕を回しながら駐車場出口から出てくる河野。
出口に止めてあったワンボックスカーの横を通り過ぎる瞬間、河野に向かって突然突風が吹きつける。
河野、思わず風が吹く方向をむくと、そこには車と壁の間に真っ黒な不気味な空間が広がっている。                                             
その真っ黒な空間を見た河野、ゾットするほどの寒気を感じその場を足早に立ち去る。

○夜道

一時間後、薄暗い道をジョギングを終えた河野が戻ってくる。
マンションに向かって歩く河野、一時間前の突風と真っ黒な空間の事などすっかり忘れている。
前方にマンションの駐車場の出入り口の灯りが薄ぼんやりと見える。
河野が靴で砂利道の砂利を踏みつける音が響く 靴音SE「ジャリ ジャリ~」

○マンション駐車場の出入り口

河野、マンションの出入り口に近く。河野が踏みつける砂利音に別の砂利音が重なる。                                                   
靴音SE「ジャリジャリ~」                                           、

河野、後方に人の気配を感じるもそのまま歩き続ける。心臓の音がバクバクし過呼吸気味になる。
胸を抑えながら歩く河野の後ろ姿を凝視する何者かの視線。
背後からの強い視線に堪えられず無意識に後ろを振り向いてしまう河野。
河野を見つめる目だけが怪しく光る黒い影。
河野に向けゆっくりと指差しする黒い影。
河野、一瞬固まるがすぐに我に戻りマンションの中に入っていく。

タイトル<SENMOU~せんもう>

○自宅マンション・部屋寝室                                                                            
 眼球からズームアウト 目を大きく見開く河野。額から大粒の汗が噴出している。

○同 一年後・
昼間
マンション外観・室内 パソコンを操作する河野(36歳)
パソコンの画面 キーボードを叩く指先のup
パソコン画面にデザインされた画像が映る
携帯電話が鳴る音SE「♪ツルツル~」
おもむろに携帯電話の着信名「瑞穂」を見て立ち上がる河野。
河野「もしもし・・あ~」
河野、電話にでるも不意に襲う眩暈にその場にうずくまる。携帯電話から瑞穂の声が聞こえる。
瑞穂「啓太、啓太どうかしたの?」
河野、意識がしだいに遠のいていく。

○無人のオフィス街 
道路の真ん中に置いてある椅子
河野のゆっくり目を開けると椅子に座っている。椅子に固定されていないのに手足が動かない。
何とか手足を動かそうともがく河野。
どこからとなく太鼓や鐘、笛の音が聞こえてくる
太鼓や鐘の音SE「♪ドンドコドン~チィ~ン」
音に合わせて踊る白塗りのゾンビのような一団が椅子に座る河野のまわりを回る。
無表情の河野。
流鏑馬のように突然疾走する馬上から河野に向けて矢が放たれる。
河野に向かって飛ぶ矢。
河野の真正面から飛んでくる矢を確認し一瞬目を大きく見開くも目をつむり首をすくめる。
矢は河野の頭すれすれに通過し後ろで踊る白塗りの男の頭部を貫通する。
その瞬間、血しぶきが河野の頭から顔面に流れ落ちる。

○広告代理店A社の会議室
代理店部長の高原と数名の社員の前で
河野がデザインした広告をプレゼンしている。
代理店の高原部長がスマホをいじりながら椅子にふんどり返って座っている
高原部長「河野ちゃん、いいんじゃないのそれで」
河野「ありがとうございます」
高原部長「さすがだね、売れっ子のグラフィックデザイナーは違うね」
河野「部長、それはいやみですか」
高原部長「そんなことねえよ、じゃあ、来週のスポンサープレゼンよろしくね」
高原部長そそくさと部屋を出て行ってしまう。

○同・通路
高原部長の部下の山川と河野が歩いている
山川「さすがですね、河野さん、一発OKって」
河野「どうだかな、部長、俺のプレゼン聞いていたのかな」
山川「どうですかね、スマホのメールばかり気にしてましたね」
河野「また、あれ?」
山川「気が付いてましたか?また新しい彼女ができたんですよ
それで奥さんとまたもめて大変だったらしいですよ」
河野「・・そうなんだ」
山川「それじゃ、河野さん16日金曜日の11時からのスポンサープレゼンお願いしますね」
エレベーターに乗り込む河野
河野「はい、分かりました。じゃあ、また来週..」
山川「ねえ、河野さん、またキャバ行きましょうよ!」
河野、笑顔で指でOKする
エレベーターの扉がしまる。

○車内
車を運転している河野。

○自宅マンション・駐車場出入り口

河野が運転している車がマンション駐車出入り口から入る

○同・
エレベーター
扉が開き、河野が降りてくる。

○同・入口ドア前~
部屋
鞄から鍵を出しドアを開け部屋に入る河野
部屋のスイッチを入れる
灯りが付くといきなり瑞穂が立ちすくんでいる
驚く河野

河野「ああ!なんだよお前~」

       腕組した瑞穂、いたずらっぽく笑いながら

瑞穂「ふふふ、やっぱりびっくりしたか」

河野、鞄を置き上着を脱ぎながら

河野「どうやって部屋に入ったんだよ」

瑞穂「マジックよ、ほらね」
ソファに座っている河野に合鍵を見せる瑞穂

河野「瑞穂、いつのまに合鍵なんか作ったんだ」

瑞穂「あなたが、いつまでたっても決めないからよ」

河野「なにを….」
瑞穂、少し怒りながら

瑞穂「なにをって!この口か…」

       瑞穂、河野の唇を指で摘もうとする

河野「やめろって、それより合鍵を返せよ、
お前のやったことは窃盗に不法侵入だ」

瑞穂「よくも婚約者に、そんなことゆうわね」

河野「いつお前が、俺の婚約者になったんだよ」
「いいから鍵を返せ」

       河野が瑞穂の持っている鍵を奪おとソファの前でもみ合っている。

      瑞穂は笑いながらジャレてる感じ。
       
行きよいあまり棚に置いてある壊れかけた古いランプが落ちる。

      河野、慌てて拾おとするも、
急に眩暈がしソファにうずくまる。

瑞穂「啓太…」

○同・寝室
ベッドに寝ている河野。
ゆっくり目を開けると瑞穂の顔が見える

瑞穂「おはよう、いつまで寝てるの…」

河野「瑞穂、何でお前がいるの…?」

瑞穂「何、寝ぼけてるの、夫婦だもんいるに決まってるでしょ」

河野「夫婦…?どうして」

瑞穂「どうしてって、一年前に結婚したじゃない」

何か部屋の中に違和感を感じる河野。

ふとカレンダーに目をやり、次に時計の日付と時間を確認する。

河野「瑞穂、今日は何にち?」

瑞穂「16日の金曜日よ」

河野すぐにベッドから起き上がり居間のテレビのスイッチを入れる。
テレビのお天気ニュースが流れている
テレビ画面
「今日、10月16日金曜日お天気は”晴れ”です。
時刻はもうすぐ午前10時になります」
河野、呆然とテレビ画面をみつめている。

河野「もうすぐ10時って16日の金曜日はスポンサープレゼンだよ」

○同・玄関口
鞄を抱えドアを開け飛び出してくる河野

  玄関口から河野の後ろ姿を見送る瑞穂

瑞穂「・・・」

○道路・車内
あせりながら車を運転している河野
片手で携帯をかける

河野「あ、もしもし山川さん」

  携帯から自動音声
自動音声「あなたのお掛けになった電話番号は現在使われておりません」

河野「え、ふざけんなよ!」
携帯を放りなげる河野。

○広告代理店A社・
地下駐車場
駐車場に止めた車から鞄を抱え飛び出してくる河野
地下から階段を駆け上がってくる。

○同・一階受付フロアー

  河野、フロアーにある時計を見る
時計は10時50分を指している。

 河野、息をきらしながら

 河野「まにあった・・」

河野、受付に向かい

河野「デザイナーの河野ですが、第一営業部の山川さんをお願いします」

受付嬢「お待ちください」

河野「あ、はい」

 受付嬢、名簿を何度も見るが山川の名前が確認できない。

 受付嬢「第一営業部ですか?」

河野「はい、間違いありません。何度も来てますから」

受付嬢「申し訳ありません。第一営業部に山川という者はおりません」

「他の部署にもおりませんが」

河野「何をいってるんだ!11時からスポンサープレゼンがあるんだよ」

「だいち君いつも連絡をとって通してくれたじゃないか」

「俺のこと覚えてないのか!証拠にプレゼン用のポスターをみてやるよ」

  河野、鞄からデザインしたポスターをみせようと取り出すが、
  何も描かれていない真っ白なポスターである。

  呆然とする河野。
エレベーターから高原部長と山川が降りてくる。
  それを目にした河野、駆け寄り。
高原部長と山川の前に立ちふさぐ。

河野「高原部長、河野です」

部長「誰だね、君は、だいち私は高原ではない」

河野「今日、11時から丸三ビールのプレゼンですよね」

部長「君、いい加減にしたまえ」

河野「あ、山川さん、こんどキャバクラに行く約束したよね」

山川「やめてください、それに僕は山川じゃありません」

河野「そうだ、パソコンに入っているデザインのデータを見てくれ」

   河野、鞄からパソコンを取り出しパワーを入れると、ブレークダウンと表示される
河野、
  その場に座りこんでしまう。
高原部長と山川その場から去る。

  座りこんでいる河野のに向けあらゆる罵詈雑言嘲笑を浴びせる陰の声。

○自宅マンション・玄関口~居間
帰宅する河野、疲れきった様子で居間のソファに座り込む。
瑞穂がその様子を見ている。
河野、瑞穂を見て
河野「君は、いったい誰なんだ?」
瑞穂「あなたの妻よ」
河野「違う!僕の知っている瑞穂はもっと明るくお気楽な人間だ」
瑞穂「じゃあ、あなたは誰なの?」
河野「誰なのって…俺は..」
瑞穂を見つめる河野。

○K病院・MIR検査室
車椅子に乗った河野。通路の反対側を巫女さんみたいな格好をした女とすれ違う。
検査機の台に乗り、頭を固定された河野。
検査技師「河野さん、それでは始めますから、何かあったらボタン押してくださいね」
非常時のボタンを握りしめている
MRI検査機の中に入っていく。
目をつむっている河野、検査機の音が絶え間なく聞こえる。
検査機の音SE「ガガガ、ドッカン、ドッカン~」
河野、検査機の中でいきなり目を開けると1センチぐらい前に白い壁が見える。
その圧迫感に息が次第に過呼吸気味になる。
ボタンを握りしめる手。

○高層ビルの建築現場・高層階
ストレッチャーに乗せられ運ばれていく河野。
河野目線で通路の白い天井が流れていく。
病院のはずがいつの間にか高層階の建築現場の通路になっている。
あっちこっち引きづりまわされる河野。
作業員A「どこから落としましょうか?」
作業員B「もちろん最上階だよ」
作業員の話を聞いている河野。体を動かそうとするが身動きが取れない。
通路反対側から従業員の話し声が聞こえて来る。
作業員B「まずい、隠れろ」
作業員、河野を乗せたストレッチャーと一緒に物かげに隠れる。
その前を従業員が携帯で話しながら通過する。
従業員「あ、もしもし…..」
河野、助けを求め必死に声を出そうとするが、声がでない。
もがく河野。
薄笑いを浮かべる作業員
作業員A「ふふ・・」
作業員B「まだまだだな」
ストレッチャーに寝ている河野の顔を覗きここむ作業員
河野目線の二人の作業員の顔up。

○ビル内・通路
作業員に押され誰もいないビルの廊下をストレッチャーに乗せられ移動する河野。
河野「お前ら、俺を何処へ連れて行くつもりだ」
無視する作業員

○同・ホール
永遠と続く無人の通路から扉が開くと突然、人で溢れたホールに出る
人々の声が響く、雑踏の中を進む河野を乗せたストレッチやー
河野、行き交う人に助けを求めようと必死で訴えかける。
河野「おい、助けてくれー、こいつらは俺を殺そうとしている、なあ頼む警察の連絡してくれ」
河野の言葉にも周囲の人々はまったく無関心、無表情で通り過ぎる。
薄笑いを浮かべる作業員
作業員「ふん、無駄だよ」
賑やかなホールからまた薄暗い通路に入っていく
河野、疲れ切った表情で目を瞑る。

○同・暗闇の世界
ふと目をさまし、もう一度、目をつぶると暗闇の中に体が浮かんでいる。
自分の意思で浮いた体を自由に動かす。浮いたまま薄暗いビルの中を漂う河野。
自由に体が動くことが楽しくてしょうがない。
いつの間にかビルの最上階屋上にいる河野。
自分の意思で動いていた河野がいつの間にか、体のコントロールが効かなくなり
最上階のフェンスを越え地上が真下に見える
河野、高所からの落下の恐怖に怯える。
地上の風景がクルクルと回る。

○病院・病室
突然、蛍光との灯りがつき看護師が入ってくる。
目を覚ます河野。
河野「ここはどこ・・」
看護師「病院ですよ」
河野「どうして俺、ここにい?」
看護師「さあ、どうしてなんですかね」
河野「俺を家に帰してくれないか」
看護師「そうですね、先生に聞いてみますね」
河野ベッドから起き上がろうとするが、そのままベッドから転げ落ちてしまう。
河野「あ・・」
看護師「あのね、あなたは歩けないの、だからどこへもいけません」
看護師、そのまま病室から出て行ってしまう
河野、何とかベッドに戻ろうとするが、またベッドから落ちてしまう。

○無人のオフィイス街・歩道
無人の街の歩道に佇む河野。
河野、自分の手で足をさすり自由に動けることに安心する。
ゆっくり歩いているが次第にスピードが上がり走り出す河野。
しかし、どこまで行っても誰もいな。
息を切らした河野、前方でカラスの集団に襲われている人物を見つける
襲われている人物が自分であることに気が付く。
河野「あれは・・・」

○同・道路
流鏑馬の馬が道路を走ってくる。
河野、馬の蹄の音に気がつく。
河野、振り向くと椅子に座る自分(河野)を確認する。
流鏑馬から放たれた矢が白塗りの男の頭を貫通する
河野、呆然と立ちすくんでいるとカラスの群れと流鏑馬の馬が
河野に向かってくる。
河野、走って逃げビルの角を曲がるとビルから出てきた広告代理店の高原部長と山川にでくあす。
二人を見て立ち尽くす河野に山川部長が声をかける。
高原部長「河野ちゃん、頼むよ今んどの丸三ビールのスポンサープレゼン、君にかかってるからな」
山川「河野さん、プレゼンうまくいったら行きましょうねキャバ」
高原部長「何だ、お前ら俺も連れてけよ」
山川「部長、そんなこと言ってまた、奥さん怒られますよ」
笑いながら去る二人を見送る河野。
河野、空を見上げ目を閉じる。

○K病院・病室
ベッドに寝ている河野。目をパット開けると母親の明子と看護師と医師の上田が見守っている。
しかし、何かが違う不思議な空気感が漂っている。
明子「啓太、わかる?」
河野「ああ、どうなったんだ俺…」
明子「瑞穂さんが、救急車を呼んで呼んでくれたんだよ」
河野「瑞穂は」
明子「仕事よ」
担当医が河野に声をかける。
上田医師「河野さん、医師の上田です。」
河野「先生、俺は一体どうなっているんですか?」
上田医師「軽い脳梗塞ですね。幸い発見が早かったからよかったですよ」
河野、自分の体の不具合に気づき。
河野「右手が動かなですが」
上田医師「軽い脳梗塞と言っても、全く症状がでないことはないですから」
「今、リハビリをやれば、ある程度は回復はできますから」
河野「僕の仕事は、デザイナーで絵を描くのが仕事なんですよ」
「ある程度って、この手じゃ仕事できないですよ」
明子「啓太、今は仕事なんて言ってないで」
落ち込む河野。
看護師「河野さん、リハビリを担当するセラピストさんがきますから相談してみてください」
しばらくするとセラピストの山本がやってくる。
山本「河野さん、セラピストの山本です。よろしくお願いします」
河野「・・・・」

○同・病室(夜)
ベッドに寝ている河野。喉に痰がからみ苦しげにベッド脇のコールボタンを手探りで探す。
やっとの思い出でコールボタンを押す河野。
いきなり病室のカーテンを開け入ってくる昼間の看護師。
喉を指差す河野。
看護師、無表情でいきなり痰の吸引機のノズルを河野の喉に突っ込み痰を吸い取る。
河野、あまりの苦しさに頭を枕に打ち付ける。
看護師、御構いなしに今度は左右の鼻の穴にノズルを突っ込む。
河野、手で払い退ける仕草をするが、余計にノズルを突っ込もうとする看護師。
そのまま気を失うようにベッドに横いたわっている河野。
河野の肩を叩くセラピストの山本。
山本「河野さん、起きてください。リハビリの時間ですよ」
目を開ける河野。
河野「リハビリって、夜じゃないか?」
山本「リハビリに昼も夜もありませんよ。じゃあ行きましょう」
河野「どこへ行くんだ」
山本、河野を車椅子に乗せ病室を抜け出す。
そのままエレベーターに乗り、何度もエレベーターの乗り降りを繰り返す。

○ある宗教施設・入り口ドア前~内部
セラピストの山本が押す車椅子に乗った河野。
河野「どこなんだここは、病院じゃあないのか…」
山本「河野さんに、最高のリハビリを提供してくれる所ですよ」
ドアが開き施設の中に入る山本と河野。

施設の中は薄暗く、真ん中で護摩炊きの炎が見える。
その前で祈祷師の女がお札を炎に投げ込み拝んでいる。
周囲には信者らが数十人が見守り、
祈祷師の女の前に患者らしき人が数人並んでいる。
河野も患者の列に並ぶも、セラピストの山本はいつの間にか姿が消えている。
患者の順番が進み河野の番になる。
その様子を見た信者。
信者A「これは、長くなるど」
信者B「可哀想になあ…」
祈祷師が大幣を車椅子に乗った河野に向けて左右に振り回す。
河野、目を瞑り無言でいる。
祈祷師の女が河野の麻痺した脚、腕、喉に左手をかざし、それぞれの患部をなぞるように手を動かす。
しばらくし河野、麻痺した手を見ながらいゆっくり動かす。
河野「動いた・・・」
祈祷師「手だけじゃないよ、立ち上がってみなさい」
河野、ゆっくりと車椅子から立ち上がる。
そして麻痺している右足を前に出し、次に左足を出す。
信者から驚きの声が上がる。
河野「歩けた・・どうなってるんだ」
祈祷師「これ、全て神の思し召だよ」
河野「神って、これは夢じゃあないのか」
祈祷師「夢ではない、今、あなたは歩いたではないか」
河野「夢でないなら、インチキイカサマだ」
「それに、ここはどこだ?夢でないなら病室に戻してくれ」
祈祷師「病室に戻れば、また歩けなくなるし手も動かなくなる」
河野「俺を、ここに閉じ込める気か」
祈祷師「そうだ、あなたはここからもう出ることはできない」
河野「うるさい」
河野、車椅子に座り出口に向かおうとすると信者たちが河野の車椅子を取り囲む。
河野が乗る車椅子を信者が押し、小さ部屋に押し込む。

○同・小部屋
薄暗い部屋の中、車椅子に乗った河野。
河野の目の前にスクリーンが張られている。
スイッチが入り、スクリーンに映像が映し出される。
その映像を見入る河野。
スクリーンに映し出された映像は、最初は穏やかな自然の風景であったが
次第に戦争や事件、事故などの残酷な映像へと変わっていく。
河野、あまりの残虐さに目を瞑るが、瞼の裏にも残虐な映像が映り込んでいる。
河野、呼吸が荒くなり、思わず叫ぶ。
河野「やめろー」
スクリーンに光の映像が映る。
スクリーンから河野に呼びかける男の声が聞こえる。
一作「啓太・・啓太」
河野、ゆっくり顔を上げスクリーンを見る。
河野「父さん・・・」
一作「啓太、起きろ!早く行くぞ」

○回想・自宅 居間
河野啓太10歳、電車の模型で遊んでいる。
啓太「ねえ、父さん、こんどの日曜日に183系の特急あずさ見にいくよね」
母親の明子、キッチンで夕食を作っている。
明子「駄目よ、お父さんは仕事なの」
啓太「え~、今度の休みにあずさを見に行く約束したのに、なんだよ
183系のあずさはもう最後で見れないんだよ」
父、一作の声「ただいまあ」
啓太「あ、父さんだ」
部屋に入ってくる一作
明子「お帰りなさい」
一作、啓太への土産を持っている。
一作「啓太、ほら、お前のほしかったやつ」
啓太、一瞬にして笑顔に戻る、みやげの包みを開ける、古臭い鉄道員が使う合図灯のカンテラが出てくる。
啓太「カンテラだ、どうしたのこれ」
一作「父さんの知り合いがな、捨てるっていうから貰っただよ」
啓太「へぇ~すげえじゃん」

○同・自宅 庭(夜)
灯りが消えた庭でカンテラを振る啓太
その啓太に向かって電車の出発進行の指差し合図をする一作
一作「安全確認、出発進行!」
啓太、カンテラを振り「出発進行!」
一作、電車が走るマネをして庭を走る
一作「ガッタンゴットン~」
それを見て喜ぶ啓太。

○同・自宅 寝室
明子「啓太、喜んでたね」
一作「そうだな、やっぱり特急あずさ見せてやるか」
明子「大丈夫なの、夜勤明けで」
一作「まあ、何とかするさ」

○同・自宅子供部屋
啓太、カンテラを磨いている

○同・自宅玄関~居間(翌朝)
朝食の準備をしている明子。
明子「啓太、父さんがね、あずさ見にいくってさ」
啓太「え、本当に」
明子「あまり、父さんに無理いっちゃだめよ」
啓太「父さんは」
明子「もうとっくに会社に行ったわよ」
啓太「ふん~、ねえ父さん忙しいだね、やっぱさあやめようかな、見にいくの」
明子「あら珍しいわね、そんなこと言って、でも大丈夫よ」

○同・当日(朝)
夜勤明けの一作、車を運転している。

○同・自宅
啓太「父さん遅いね、駅に8時45分着だから、もうそろそい出ないと」
明子「もうすぐ帰ってくるはよ、会社でるとき電話があったから」

○同・渋滞道路
一作「何だよ、いつもすいてるのに今日に限って渋滞だよ」
一作、車で横道に入る、狭い道をすり抜けて幹線道路でる。
一作、時計を見る
一作「まずいな」
車のアクセルを踏む
一作の運転する車がカーブを曲がるとハザードが付いた大型トラックが停止している
思いっきりブレーキを踏む一作。
車のブレーキ音と衝突する衝撃音SE~「キキ~ガシャ」

○同・自宅
電話が鳴る
明子「はい、河野です、はい、え、主人が事故!」
啓太、持っていたカンテラを床に落とす。
啓太「あ、」
カンテラのガラスにヒビが入っている

○同・自宅仏壇 一作と啓太が写った写真
カンテラを持つ啓太とカメラに向かって指差しポーズする一作の写真
啓太「僕があずさなんか見たいなんていわなきゃよかたんだ」
明子「そんなことないよ、お父さんはねえ啓太の喜ぶ顔をみたかっただけなのよ」
ヒビが入ったカンテラを大事そうに持っている啓太。

○暗闇の中から啓太を呼ぶ声
暗闇の中でカンテラの灯りがゆれている
暗闇の世界の中に立つ啓太。
啓太の真正面に立つ黒い影がしだいに父親の一作に変わる
一作「啓太、啓太もう帰れお母さんの所へ」
啓太「父さん」
一作「分かったか啓太、ほら壊れたカンテラ直したからな」
一作の手から啓太にカンテラを渡そうとするも
一年前に見た目の光った黒い影が一作とオーバーラップし光の中に消えていく。
それを呆然と見つめている啓太。
啓太「あれは・・父さん」

○K病院・病室
河野、ベッドで目をさます。
明子と瑞穂の顔にピントが合う
明子「啓太、啓太」
河野「ここはどこ・・これは現実なのか」
明子「啓太、病院よ、あなたねここ三日間、昏睡状態だったのよ」
河野「え、母さん、父さんは」
明子「何いってるの、いるわけないでしょ」
啓太「父さんが、助けてくれたんだ、父さんが母さんの所に帰れって」
明子「そう、お父さんが」
瑞穂「啓太、大丈夫、心配したよ」
河野「瑞穂・・なあ今これは現実なのか夢なのか俺にはわからない」
瑞穂「現実よ、分からないの」
河野「ああ、」
瑞穂「わかったは」
瑞穂、いきなり河野にキスをする、唇をなかなか離さない瑞穂。
河野、息が苦しくなりはねのける。
河野「ああ、もう分かったよ、相変わらずだな」
明子「啓太、瑞穂さんがね、部屋に入ってっ救急車を呼んでくれたのよ」
河野「え、どうやって部屋に入ったんだ」
瑞穂「だって合鍵持ってたから」
合鍵を見せる瑞穂
河野「お前、合鍵まだ持ってたんだ」
瑞穂「何言ってんのあなたが作れって言ったじゃない」
河野「俺が、お前が勝手に作ったんだろうが」
瑞穂「何それ、失礼ね」
明子「何言ってんの啓太、瑞穂さんが来なければ、どうなっていた思うの」
河野「そうか、瑞穂は命の恩人か」
瑞穂「ふふ、どう私のありがたみが少しはわかったでしょ、じゃあこれで決まりね」
河野「え、何が」
瑞穂「また言ってる」
河野「あ、そうだ今日は何日だ」
瑞穂「16日の金曜日よ」
河野「あ、スポンサープレゼンにいかないと」
河野、ベッドから起き上がろうとするが、全く動けない
明子「何いってんの,行ける訳ないでしょ、あなたは体が麻痺してるのよ」
瑞穂「プレゼンって丸三ビールのプレゼン」
河野「ああ」
瑞穂「丸三ビールの広告デザインの仕事って何も決まってないわよ」
河野「決まってないって代理店のプレゼンでもうokもらってるし」
明子「そんな仕事のことばかり言ってないで、少しは体のこと考えなさい」
河野「あれって夢なのか・・」

○同・医師と看護師が入ってくる
上田医師「河野さん、医師の上田です。気が付きましたか、」
河野「先生、どうなってるんですか僕のからだ」
上田医師「うん、脳梗塞ですな、もう少し発見が遅れいればよくて寝たきり最悪呼吸停止でしたよ、あなたはラッキーでしたよ」
河野「先生、今思い出しても怖くて、自分に起きたことが何が現実なのか夢なのかが全く分からないのです」
上田医師「それはおそらく、せん妄ですな」
河野「せん妄」
上田医師「そう、急激に環境が変化することで脳が混乱するんですな、今回、河野さんは脳梗塞になり。脳細胞の一部が死滅することで体が右半身麻痺になり体が対応できずに幻想や幻聴が脳の中で起きたのです。」
河野「じゃあ、僕が体験したことはすべて夢ということですか」
上田医師「まあ、そいうことですな。それで河野さんあなたの担当する、看護師の野沢とセラピストの山本です」
野沢「野沢です。よろしくお願いします」
山本「山本です。よろしくお願いします、これから頑張ってリハビリしていきましょう」
河野「前にどこかで会いましたっけ」
山本「いいえ、初めてですよ」
二人の顔を見ながら
河野「そうですか」
明子「啓太、これ、お父さんがお前を守ってくれたのよ」
啓太がカンテラを持ち一作が指差し確認のポーズをした写真を見る。
1年前の黒い影と夢の中の影と写真が一致する。
啓太「あれはやっぱり父さんだったんだ」

○自宅マンション(半年後)
病院を退院をし自宅に戻ってきた河野
瑞穂に支えられて部屋に入ってくる。
河野、真っ先に棚の上のカンテラを見つけ手にする。
ヒビの入っているはずのカンテラが綺麗に修復されている。
河野「あれは、夢でも幻想でもなかったんだ」
瑞穂の声がオフで聞こえる
瑞穂「それでさあ、いつ結婚するの、もうねえ、逃げられないわよ。
私がいなければ、あなたは生きていけないのよ、わかってるよね」
カンテラを持つ啓太と指差しポーズの一作の写真
END