ラブレター
昨年、亡くなった俳優の中山美穂さんのお別れ会をテレビで放送していた。特に中山美穂のファンではありませんが、30年くらい前に「ラブレター」という映画があり、その主役を中山美穂が演じていました。この映画は岩井俊二が監督・脚本を担当した映画で、恋愛映画としては個人的にはナンバー1の映画だと思っています。映画では中山美穂が藤井樹と渡辺博子の二役を演じています。
ストーリーは単純で亡くなった婚約者に手紙を書くと、来るはずのない返事が来たのです。メインのシーンは中学時代の回想と現在のシーンで構成されています。中学に入学すると、同じクラスに藤井樹という男女で同姓同名の二人がいるところが物語の発端になります。
この物語の面白さは樹という一人の女性を過去と現在で同時に表現していること、そこにある意味、渡辺博子というもう一人の樹が重なることで
より緻密で魅力的な物語になっていると考えます。
この映画に何故ここまで惹きつけられるのか。ストーリーはシンプルですが、構成が多重でいくつも要素が絡み合っています。恋愛も物語の中には、淡い恋、悲しい恋、切ない恋と様々な恋が描かれ、その背景に人の死があり、それらが同時進行で物語が展開していきます。ですから観ていて飽きず、どこか切なく惹きつけられてしまうのです。もちろん映像や音楽の美しさもあります。
映画では何気ないシーンに実にこだわりがあります。例えば最初のシーンで、郵便配達人が樹に郵便物を渡す場面で、博子からの封筒を樹が落としてしまい、そのまま樹は家に入ってしまいます。すると郵便配達人が封筒を拾いドアを叩いて樹に渡します。普通であれば郵便配達人から郵便物を受け取ってその場で郵便物の封筒を見つけて「何だろう」といった感じです。この物語の中では手紙が重要な要素になっていて、今のようにスマホやメールでのやり取りでは成立しないお話です。
一つ気になった場面で雪山で遭難した男樹が死んでいたことを初めて樹が知った時のシーン、母校を訪ねた樹が担任だった先生に見送られて校舎の出口で男樹の死を知らされた時、少し遠めで薄暗いので樹の表情がまったく見えないのです。普通、驚きの樹の表情とかがあっても良いと思うのですが、そのまま淡々とシーンが続いていきます。その後、雪の中で死んでいるトンボの場面がありましたが、これがすべて何でしょう。
岩井俊二の演出は型にハマった予定調和的な話の進め方を極力避ける演出であり、そのこだわりが映画全体で観ると映画としてのアクセントになっていて
少しオーバーに表現する漫画的といっても良いのかも知れません。物語はすごく切ないのに所々ギャグ的な要素を入れることで逆にストーリーが引き締まる
のです。
ラストに図書カードの裏に似顔絵が描いてありましたが、中学生らしい描写で男樹の思いが凝縮したカットでした。そういえば自分も中学生の頃、同じようなことをしたなと思い出しました。岩井俊二の作る映画は、何か特別な事件や事象があるわけでは無く、誰にでもありがちな日常的なエピソードを繊細な心理描写と映像美で表現し、観ている者を惹きつけます。
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#画質が悪くアラビヤ文字入りですが下記で全編観れます。










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