退院する日

2021年11月21日

退院日が決まり、長い長い入院生活も終わりに近づいてきました。入院当初、完全看護の患者であり自分では何一つできない状態でしたが、少しずつ看護師さんからの手が離れ、最後は自分で歩いてトイレに行けるまでになりました。そうするともう看護師さんにやってもらうことはほぼ無くなり、しいて言えば爪を切るぐらいです。それも今では自分で手足とも爪を切ることができます。退院間近になると現実を突きつけられる事が多くなり、少し考え込んでいると、どこで聞いたのか君が病室にやってきて真顔で「大丈夫け~」といい「どうだろう?」と答えると君は「しんぺいするような事をいっちょし~」と甲州弁丸出しで言って去って行きました。君がいてくれたおかげで退屈な入院生活も楽しく、麻痺した手足のことなど一時忘れて過ごすことができました。そんな君との関係も退院日が近ついてくると、君は少しよそよそしくなり病室のカーテンの前で一呼吸おいて入ってくると、一方的に喋り出て行ってしまいました。ただそれもあまり長続きせず、いつものいたずらクマドンといった感じでした。退院する数日前になり、一度退院してから二週間後にまた短期の入院を別階にすることになっていて、そうすると君は「挨拶に行くね」といい、でもしばらくすると「やっぱり行かない」といい、大丈夫、歩行訓練で病院の中を歩いているからどこかでまた会うよとね。
退院する当日、朝やってきた君は「たまたまね」と言い、残りの荷造りを手伝ってくれました。そして退院…。 結局、自分の部屋に戻ることはできず、実家に二週間戻ることになりました。普通の家で生活してみると意外と生活できることが分かり、これなら自立できると自信になりました。そしてまた病院でボトックスの注射をし、そのまま最後のリハビリ入院しました。注射を打ち車椅子で病室に行く前に以前の病室の階でエレバーターから降りると、10mぐらい先に偶然にも君がいて、目があうと「ニコッ」と笑いやってきた君に、まさか抱きつかれるとは思いませんでした。何と言えばいいのか「まだいるよ」「うん、わかった」って。二週間のリハビリ入院はあっという間で、退院する前の日にナースセンターに挨拶に寄ると君もいて、でもすぐに近くのエレベーターに乗り込み振り返るとドアが閉まる直前に君が通る姿が見えました。
それから1年後、同じエレベーターに乗り込むと偶然にも君が乗っていました。何かワープでもしたかのような不思議な気がして、うまく言葉が出ませんでした。まあ、いろいろなことがあるけど仕方ないね。まだまだこれからだよ…。